健康診断の血糖の項目で、空腹時血糖値以外にHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という検査項目があります。何の数字だろうと疑問に思った方もいらっしゃると思います。空腹時血糖値は高くなかったのにHbA1cだけ引っかかってしまったという方もいらっしゃるのでは? HbA1cとは、いったい何でしょうか。どうやったら下がるのでしょうか。
そもそもHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)って何?
Hbは、血液中の赤血球内に含まれているたんぱく質の一種で、全身の細胞に酸素を運んでいます。このHbにブドウ糖がくっついたものをHbA1cと言います。
HbA1cの値は、過去1~2か月の血糖コントロールの状態を反映します。血糖値が慢性的に高い状態が続くと、高い値となります。
空腹時血糖値との違いは、空腹時血糖値は健診前の食事などで高くなったり低くなったりと影響するのに対し、HbA1cは赤血球の寿命(120日)と関係し、健診前の短期的な血糖値の影響を受けずに、何カ月間もの間変動することがありません。そのため、健康診断直前に食事や運動で何とかしようとしても数値の改善にはつながらないのです。
HbA1cを下げるには?
HbA1cを下げるには、血糖コントロールを良い状態にしておくことがポイントです。
血糖コントロールを良い状態にするには、血糖値を必要以上に上昇させない、糖の吸収を穏やかにする、運動を習慣的に行う、日常生活でこまめに動くなどが大切です。具体的には、食習慣・運動習慣で次のようなことを見直してみてはいかがでしょうか。
(1) 食事と食事の間隔が空き過ぎないように
朝食を抜くことが週3日以上ある、昼食と夕食の時間が8時間以上あくことが多い、夕食の時間が22時を過ぎることが週3日以上ある方は、食後の血糖値が急上昇(血糖値スパイクとも言います)することがあります。食事は、抜かずに1日3食規則正しく食べるようにすると血糖値の急上昇を抑えられます。
どうしてもお仕事の都合で、夕食が遅くなってしまう方は、昼食と夕食の間(夕方)におにぎりやエネルギーバーなどの軽い食事をとり、食べた分は夕食から減らして野菜中心の食事を心がけ、1日の総摂取エネルギー量が増えないようにすると血糖値の急激な上昇を抑えられます。
また、朝が忙しくて朝食を抜きがちな方は、おにぎり、サンドイッチ、牛乳や豆乳などの飲み物などの簡単に口に入るものをあらかじめ準備し、食べるようにしましょう。
(2) 夕食後の間食・アルコールは控えめに
夜は寝るだけなので、夜食べた分はエネルギーとして使われません。そのため、血糖値が下がりにくく、血糖コントロールを乱す原因となります。夕食後の間食やアルコールが習慣になっている人は気を付けましょう。
(3) 野菜や海藻類は、毎食、最初に食べましょう
野菜や海藻類には食物繊維が多く含まれ、ブドウ糖の吸収を穏やかにしてくれます。これが血糖値の急激な上昇を抑えることにつながるので、野菜・海藻類は毎食食べましょう。ちなみに、これらを先に食べることも血糖コントロールに効果的です。
ところで、外食が多い方は、単品料理よりも栄養のことを考えて「定食」を選ぶ方が多くいらっしゃいます。しかし、大事なのはバランスです。
たとえば、「海鮮あんかけ焼きそば」と「油淋鶏定食」で比較した場合、単品料理ではありますが、「海鮮あんかけ焼きそば」の方が、炭水化物(麺)+海鮮(たんぱく質)+野菜あんでバランスが良くおすすめです。野菜が多いメニューを選ぶと大盛などにしなくてもボリューム満点となりますので、野菜の量に注目して選んでみましょう。
運動習慣がない人は、まずはこまめに動く習慣を
よく運動する人は、ブドウ糖がすぐに消費され、血中のブドウ糖を調整するインスリンというホルモンが効きやすい体質になると言われています。
普段あまり運動できていない方は、駅から家、スーパーから家までの距離を遠回りするなど、簡単なところから運動量を増やしましょう。毎日1万歩ぐらいの運動ができれば理想的です。
また、「テレビのCM中は足踏みをする」、「テレビのリモコンはソファに置かず、机の上に」、「ワイヤレス掃除機でこまめに掃除を」、「階段を使う」などをこまめに動くことを意識してみるのもおすすめです。
睡眠不足に注意を。休日はリフレッシュしてストレス解消を
睡眠不足は過食や運動量の低下から体重増加を引き起こし、インスリン抵抗性や2型糖尿病リスクを高めるという研究結果もあります。※1)また、ストレスが高い状態が続くと血糖コントロールを悪化するともいわれています。夜は、就寝する1~2時間前にぬるめのお風呂に15分くらいゆっくり浸かり、質の良い睡眠をとりましょう。休日は、自分のための時間を確保しリフレッシュを。
医療機関にかかりつつHbA1cを下げる努力を
空腹時血糖値が低く、HbA1cが高い人は、食後高血糖の可能性があります。ブドウ糖を飲む検査などで詳しく調べる検査が必要な場合もありますので、必ず医療機関を受診するようにしてください。
また、上記にまとめたようにHbA1cは、簡単には下がりにくい数値です。特別な対策はありませんので、地道に食習慣・運動習慣を続けることが重要です。なお、急激に食事量を減らすような減量は血糖コントロールを乱すため、HbA1cが高くなることがあります。ダイエットしている方はお気を付けください。
プロフィール
管理栄養士 食物アレルギー栄養士
川島 美由紀(かわしま みゆき)
大学卒業後、建設会社に勤務、その後医療系ベンチャー企業に転職。全国約800の医療機関に食事指導支援サービスを開発・運営。食事指導のプロを目指す栄養士のポータルサイトの企画開発・運営全般に携わる。その後、特定保健指導の委託会社に転職し、特定保健指導を実施。今までに食事指導した人数は、延べ12000人以上。
現在は、子どもの食育に特化したサービス企画や保健センターでの栄養相談、ミス・グランド2018・2019ファイナリストの栄養サポートなどで活躍中。