検査値の解説

肝臓には、健康の維持に欠かせないさまざまな働きがあります。たとえば、食べたものをエネルギーに変換する、脂肪の消化・吸収に必要な胆汁の生成をするなどがあげられます。アルコールを飲み過ぎたときに、解毒してくれるのも肝臓です。じつに500以上もの働きを黙々とこなしている働き者が肝臓です。

「沈黙の臓器」の状態を知るためには?

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど、痛みや不調を感じることが少ないとされています。もともと再生能力にすぐれている臓器ですが、限界はあります。酷使を重ねると、いざ症状が出てしまったときには、かなりの重症に陥っているケースも少なくありません。肝臓がどのような状態なのか、血液検査では、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP(γ-GT)の数値が指標となっています。

肝臓の状態を示すAST(GOT)とALT(GPT)って?

AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)とALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)は、とり入れた栄養素をアミノ酸に変換し、身体を動かすエネルギーに変える働きにかかわる酵素です。ASTの多くは、心臓と筋肉、そして肝臓に存在しています。ALTは、他の臓器にあまり含まれておらず、肝臓に多い酵素です。なんらかのトラブルで肝臓の細胞が破壊されると、ASTとALTが血液の中に流れ出します。ASTとALTの基準〜異常の目安としては、以下の数値が挙げられます。

AST・ALT
30以下 基準
31~50 要注意
51以上 異常

ASTとALTどちらの数値も高い場合、急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝、肝がん、アルコール性肝炎など肝臓の病気が疑われます。ASTだけ高い場合は、心筋梗塞や筋肉の病気が疑われます。
病気の診断には、そのほかの検査も必要となります。また、基準値内であっても、病気の可能性がないというわけではありません。

γ-GTP(γ-GT)から何がわかるの?

γ-GTP(ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ)は、肝臓の解毒作用に関わっている酵素です。アルコールが原因で障害が起きたときに、γ-GTPが血液中に出てくるとされています。γ-GTPの数値からは、肝臓や胆道に異常がないかがわかります。γ-GTP50以下を基準とし、51~100は要注意、101以上は異常を示す数値とされます。高いγ-GTPには、アルコール性肝障害以外にも、慢性肝炎、胆汁うっ滞、薬剤性肝障害が疑われます。お酒を飲まない人でも注意が必要です。

健康診断でわかる肝臓の病気とは?

肝臓の病気は、大きく分けて3つ挙げられます。一時的に起こる急性肝炎などの急性肝障害、慢性肝炎や肝硬変など長く続く慢性肝障害、良性あるいは悪性の腫瘍です。健康診断で指摘を受けやすいのは慢性肝障害で、その中でも、アルコール性肝障害、脂肪肝など生活習慣に関わる肝臓の病気です。脂肪肝は、ただちに通院を要する状態ではなくても、放っておくと肝炎や肝硬変、肝がんへと進行する恐れがあります。また、脂肪肝のない人に比べると、心臓の病気や糖尿病になる確率が高いとされ、注意が必要です。

肝臓の病気と治療費は?

肝臓の病気は、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧など、いわゆる生活習慣病にも関わっています。アルコールをほとんど飲まない人にも、脂肪肝が起こり、肝硬変、肝がんへと進行する可能性があります。

ウイルス性肝炎

ウイルス性肝炎は、A型、B型、C型、D型、E型等の肝炎ウイルスいずれかの感染に原因があります。急性ウイルス性肝炎を発症するのはA型とB型です。黄疸、発熱、食欲不振などの症状が出たときに早期に治療すれば治ります。B型とC型のウイルス性肝炎は慢性化して、肝がんへと進行することも多いので、注意が必要です。

アルコール性肝炎

アルコール過多を原因とする脂肪肝が進行し、悪化するのがアルコール性肝炎です。吐き気やだるさ、黄疸などの症状が特徴ですが、症状がはっきりとは現れないケースもあります。定期的な検査が必要になります。

肝硬変

肝臓の細胞が壊死と再生をくりかえしていくと、肝臓が硬く縮んだ状態になります。

肝がん

肝臓が正常な状態から突然肝がんになることはあまりありません。主にウイルス性肝炎から進行する場合と、他の器官のがんが転移する場合があります。

このように、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ-GTP)が高いと、肝臓の病気のリスクが高いとみなされ、健康年齢が高くなることがあります。
(健康年齢算出のしくみ)

肝臓の病気をどうやって予防する?

脂肪肝の人は、肝臓が取り返しのつかない状態にならないよう、以下の点に注意しましょう。定期的に検診を受け、異常があれば、すぐ専門医の受診をおすすめします。

※記載内容が必ずしもすべて正しく、すべての方に当てはまるわけではありません。予めご了承ください。

参考サイト
http://www.jsge.or.jp/citizen/2010/kanto.html


参考文献
平成27年 厚生労働省国民健康・栄養調査 PDF


医療データソース
株式会社JMDCが管理する約160万人の診療報酬明細書(レセプト)データ