血圧とは?原因と診断基準から対処法・治療までをすべて解説!

生活習慣病の代表格ともされる高血圧。自覚症状があまり感じられない、あっても頭痛程度なので発見が遅れることもしばしばです。気がついた時には「基準値を大きく上回っていた!」なんて怖いですよね。今回は高血圧の原因や対処方法、治療における食事や運動、薬を使用する際のガイドラインなどを解説します。

高血圧かも?
診断がつく前に感じられる自覚症状はある?

自宅や健診で血圧を測ってみたら、「あれ?なんだか普段より高い気がする・・・」
こんな形で発覚するケースが多いのが高血圧です。血圧が高いからといって、必ずしも自覚症状が出るわけではないのが高血圧の怖いところ。実感があるタイプの自覚症状でも、高血圧の場合には頭痛やめまい、耳鳴りといったようなはっきりとしない症状ばかりです。そのため発見が遅れてしまい、気が付いた時にはすぐに医学的介入が必要になることもあります。はっきりとした体調不良がなくても、気になる自覚症状が続く場合は、一度血圧を測ってみましょう。できれば日常的に血圧を測る習慣があると、病気の早期発見にも役立ちます。

高血圧の原因とは?

高血圧は、原因がはっきりしている「二次性高血圧」と原因不明の「本態性高血圧」に分けられます。

二次性高血圧は何かしらの原疾患(腎疾患、甲状腺疾患など)があり、そのうえで高血圧症状が出ている状態のことです。ですので、主な対処方法は原疾患の治療がメインとなり、そのうえで血圧のコントロールを図ります。

本態性高血圧は加齢や肥満、ストレス、喫煙や塩分過剰摂取に加え遺伝的素因や生活習慣などが複雑に絡み合って血圧が上昇している状態を指します。はっきりとした原因がわかりにくいので、血圧がなぜ上がっているのかを評価し、そのうえでさまざまな対処方法をとって治療を行います。

放置すると怖い高血圧、放置するとどうなる?

高血圧は著明な自覚症状はありませんが、その全身にかかる負担はじわじわと私たちの体を蝕みます。果ては脳卒中、心筋梗塞、網膜障害からの失明、腎障害にもなりえます。これらは高血圧を放置しておくことにより、動脈硬化が進行することで併発する可能性のある疾患です。


高血圧の基準値は?
新しく設けられたガイドライン2019

高血圧の診断基準にかかわるガイドラインは、その時代に合わせて変化しています。最新の高血圧治療ガイドラインの基準値を以下にまとめました。

【高血圧治療ガイドラインの基準値】

  • (基準値)140/90mmhg以上
  • (高値血圧)130~139/80~89mmhg
  • (正常高値血圧)120~129/80mmhg未満(正常高値血圧)
  • (正常血圧)120/80mmhg未満

※高血圧治療ガイドライン2019参照

これらの基準値はいわゆる診察室血圧の基準値で、病院で計測した際に基準とされる数値です。ご家庭での血圧測定の基準値も設けられていますが、いずれも上記基準値よりも-5mmhgとしたものが家庭で計測した場合の基準値とされています。高血圧の診断には、家庭での血圧測定の結果も参照します。ですので血圧測定ができる環境がある方は、ぜひ受診の際には家庭での測定結果も持参してみてください。

ガイドラインに定められた数値と血圧測定の状況をあわせて確認

ガイドラインは、基本的な基準値を定めています。しかし、実際の診断には問診から血液検査、病歴、身体的所見、家族歴なども加味して総合的に判断します。とくに血圧の測定に関してはいつ頃、どのような状態で計測したのかが重要です。家庭で計測した時の値、診察室で計測した時の値、24時間自由行動下に計測したものなど、さまざまな状態で計測したデータをもとにして判断されます。

高血圧対処方法と改善方法

本態性高血圧の場合、最初に指導されるのは、おもに生活習慣の改善です。運動や睡眠、食事、飲酒、喫煙やストレスなどの精神心理状態を踏まえたうえで対処方法が検討されます。さらに肥満や糖尿病に高血圧がともなうことも多いので、この場合はあわせて運動療法も行い、生活習慣だけではなく、身体的要因の改善もあわせて行います。

高血圧対策、最初に指導される食事療法について

日本人は先進国の中でも、比較的塩分摂取量が多い国として知られています。近年は高血圧などの生活習慣病が広く認知されることにより、減塩などの食習慣の改善が世間一般的にも容易に行える環境になりました。とくに食塩摂取量は高血圧発生頻度との相関が示されているので、すべての高血圧患者に対して必要といわれています。

高血圧対策の食事は?飲酒はしてもいいの?

では実際には、どのような食事の調節が必要なのでしょうか。減塩といわれている食塩摂取量は、1日6g未満とされています。食事の内容としては野菜や果物を積極的に摂取することが望ましいとされています。青魚などに含まれるオメガ3系の飽和脂肪酸も降圧効果をもたらします。アルコールは男性で1日20~30ml以下、女性で10~20ml以下とされています。(エタノール換算での摂取量です。)目安としては日本酒1合、ビール500ml1本、酎ハイ350ml1本、ウイスキーダブル1杯、ワイン2杯弱などです。お酒が弱かったり、顔が赤くなりやすい人はアルコールの分解が遅い傾向がありますので、摂取量をさらに抑える必要があります。

具体的な対策

日本人は一般的に、塩分を1日平均10g以上摂取しているといわれています。ですので1日6gまでの減塩というのはかなり厳しい(食事が全てかなり薄味になる)のが、実際のところのようです。さらに6gという塩分量がわかりにくく、つい過剰に摂取してしまうこともあるでしょう。筆者が患者さんに食事指導を行った時には、実際に6gの塩分量を目で見てもらって、実感をつかんでもらったりもしました。塩分を含まない調味料(レモンやコショウ、しょうがなど)を使用して味に変化をつけるのもよいでしょう。減塩料理に特化したレシピなどを参照してみるのもいいですよね。それでもどうしても難しい時は、近年スーパーなどでも販売されている減塩調味料を使用してみたり、サプリや降圧効果が期待できる特定機能食品に頼るのも一つです。目標をクリアすることもとても大切ですが、それがかえって強いストレスになって血圧が上昇してしまうこともあります。自分のペースでうまく生活に取りいれる工夫をしましょう。

高血圧の対処方法の運動

適度な運動は血管の内皮機能を改善し、血管抵抗性を下げ降圧効果があるとされています。
運動習慣を身につけることにより、減量効果も期待できます。肥満の改善により身体の必要酸素量も低下し、心機能への負荷も減り、さらなる降圧効果が期待できます。

高血圧の改善に向けた運動とは

血管抵抗性への改善や降圧効果を目的とした運動には、有酸素運動が有効とされています。具体的には水泳、ジョギング、ゴルフなどです。毎日30分以上か、週180分以上が目安です。急に運動強度をあげたり無理な運動を継続すると、かえって体を痛める原因にもなります。無理のない範囲で、習慣的に行える運動をしましょう。

無酸素運動(レジスタンストレーニング、抵抗運動)の効果

ダンベルやおもり、ゴムチューブなどで筋力や持久力を高める運動は、循環器疾患や高血圧疾患ではかえって危険性を高めるとも言われていました。しかし、近年はその重要性が見直されてきています。ただ、実際の研究結果や症例が少なく、検証が不十分なのが現状のようです。積極的に行う必要性が無いといわれていますので、有酸素運動の補助として取り入れる程度にとどめるのがよいでしょう。

そのほかの高血圧対処方法、生活習慣の改善について

そのほかの生活習慣や自己管理を是正することで、高血圧の症状を改善することが期待できます。ぜひ食事療法、運動療法と組み合わせて実行しましょう。

禁煙

喫煙は交感神経を刺激し、血管が収縮することにより一過性の血圧上昇を引き起こします。高血圧だけではなく、虚血性心疾患や脳卒中などのリスク因子でもありますので、健康な人でも禁煙は推奨されています。とくに高血圧患者の場合、喫煙による血圧上昇は15分以上持続するといわれており、連続して喫煙するとその持続時間も長くなります。

減量

肥満は血圧上昇因子の1つで、減量により有意に血圧が低下することがわかっています。
適正体重値としてBMI(体格指数 = 体重(㎏)÷ 身長(m)2)25未満を維持することを目標としていますが、近年ではさらにウエスト周囲径が基準値を超えていた場合も減量を推奨しています。(男性85㎝未満、女性90㎝未満)実際に4㎏程度の減量で有意に降圧が期待できるという研究結果も出ています。

ストレスコントロール

ストレスも交感神経を過敏にし、血圧を上昇させます。ストレスを感じているという実感があればよいのですが、知らず知らずのうちにストレスが加わり、血圧が上昇していることもあるとおもいます。この場合は24時間自由行動下血圧測定法(ABPM)にて、特定の環境下(職場や家庭など)で血圧が上昇していることが特徴です。その場合は、環境の改善とともに、自分自身の性格の傾向や特定の環境下を把握し、対処方法を取ることが重要です。

なかなか改善しない高血圧への
医学的介入のタイミング

高血圧の治療は、初診時に血圧測定を行うところから始まります。基準を超えていた場合、その他の病歴、身体所見や検査所見を確認し、確実に二次性高血圧を除外したのち、まずは生活習慣の改善を指導されます。患者さん自身に主体的に生活習慣を修正してもらい、一定期間(通常3か月以内)後に再度血圧測定を行います。その後、その再検結果をもとに脳心血管疾患のリスクを判別し、再度生活習慣の修正で経過を見るのか、投薬治療を開始するのかを判別します。

投薬治療は、患者さんの年齢や合併症などにより降圧目標がたてられ、その目標に向けて開始されます。一般的な高齢者を例にあげると、基準値である140/90mmhg未満を目標としています。しかし、糖尿病、慢性腎臓病や心筋梗塞後の患者さんなどの場合は脳心血管疾患高リスク因子と分類されるため、目標値が130/80mmhg未満と厳しく設定されます。

まとめ

自覚症状が乏しいことで「サイレントキラー」とも呼ばれる高血圧。その早期発見と対処が重要な疾患です。少しでも気になることがあれば実際に血圧を計測してみるのも良いでしょう。高血圧は生活習慣病でもありますので、日々の小さな取り組みが重要な治療へとつながります。さらにそのほかの生活習慣病でもある「糖尿病」や「高脂血症」なども併発していると改善が難しくなるばかりではなく、さまざまな合併症が発生しやすくもなります。重症化する前にひとつでもできることから取り組み、症状の是正に努めたいですね。

※高血圧ガイドライン、厚生労働省健康情報サイト参照