尿検査には腎臓の病気の早期発見に使われる尿蛋白という指標があります。尿蛋白が高いことが健康診断の際に判明した場合、どのようなリスクがあるのかご存知ですか?
今回は、尿蛋白について知っておきたい基礎知識と、改善するために意識をしたい生活習慣について解説します。
尿蛋白がプラス(+)になるとなぜいけないの?
健康な人の尿にはごく微量なたんぱく質が含まれますが、一定量以上のたんぱく質が排泄されることをたんぱく尿といいます。尿蛋白が陽性になると正常な状態よりも多くのたんぱく質が尿に含まれているため、腎臓になんらかの問題が生じている場合があります。
尿蛋白について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
尿蛋白 | 検査値の解説 | 健康年齢
尿蛋白を下げるためにはどうしたらいいの?
尿蛋白を下げるには排出の際に腎臓に負担がかかるたんぱく質や塩分のとりすぎに注意する必要があります。食べすぎに注意して肥満を予防すること、禁煙や十分な睡眠をとるなどの生活習慣改善が大切です。
(1) ±(要注意)の場合
腎機能に異常がなく、尿蛋白が±の場合は一時的に尿蛋白が陽性になる“生理的尿蛋白”である可能性も考えられます。例えば、肉などの食べすぎによるたんぱく質の過剰摂取が原因で腎臓の働きが追い付かない場合や、激しい運動やストレスなどでたんぱく質が体内で過剰に生成されることでみられる場合があります。
【食事】
尿蛋白が±の場合、極端な食事制限は必要ありませんが、肥満傾向の場合は肥満を改善することで尿蛋白が下がることが明らかにされています。甘いお菓子やジュース、脂っこいものなど高カロリーな食品のとりすぎに気を付けましょう。
【睡眠・ストレス】
睡眠不足やストレスがたまっているときは、腎臓にも疲れがたまっていると考えられます。夜遅くに食べ物や飲み物をとるのを控えて腎臓を休めることが大切です。ストレスが原因で尿たんぱくが増えることがあるため、リラックスする時間を作ってストレスを発散させましょう。
【禁煙】
健康全体にも悪影響がある喫煙は腎機能にも悪影響があります。喫煙本数が多いほど腎機能悪化のリスクが高まるため、禁煙にチャレンジしましょう。
(2) +(要注意)、2+以上(異常)の場合
尿蛋白が2+(++)以上の異常値が続く場合、腎臓の機能に問題がある場合があります。慢性腎臓病になると人工透析や腎移植が必要になるだけではなく、動脈硬化や脳卒中、心筋梗塞を発症する恐れもあるのです。+でも繰り返し陽性になる場合は注意が必要です。腎臓病は症状が出るころには進行している場合があるので尿蛋白が陽性の場合は、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。
【食事】
尿蛋白が陽性の場合は、腎臓の負担を減らすためにたんぱく質、食塩の制限が必要になります。
■たんぱく質
たんぱく質の代謝産物(老廃物)を排出する際に腎臓に負担がかかるため、とりすぎに気をつけましょう。ただし、たんぱく質は体にとって必要な栄養素であるため完全に避けることはおすすめできません。限られた量の中でできるだけ質の良いたんぱく質をとるためには、必須アミノ酸(体内で合成できないため食事で補う必要のあるアミノ酸)をバランスよく含んでいる肉や魚、卵、大豆からとるようにすると良いでしょう。たんぱく質を制限することで体重が落ちてしまう場合は、エネルギー量の管理が必要ですので、専門家に相談をしながら食事療法に取り組んでみてください。
■食塩
腎臓に負担をかけないためには、食塩摂取量は3~6g/日までを目安にします。加工食品、塩干物、漬物などは目に見えない塩分が多く含まれているため、なるべく控えるようにしましょう。調理をする際は、新鮮な食材を用いて食材の持ち味を活かしたり、香辛料、香味野菜や果物の酸味を利用して薄味でも物足りなさをなくす工夫をすると美味しく減塩ができます。
尿蛋白が出たら放置しないで
蛋白尿を下げるためには、なるべく腎臓に負担をかけない生活習慣が大切です。まずは、日頃の食生活を振り返ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。尿蛋白が陽性の場合は、放置せずになるべく早めに改善につながる行動をしてください。尿検査で尿蛋白の指標を確認することは、腎臓病の早期発見にも役立ちますので、こまめに検査をするようにしましょう。
【参考文献】
※1 公益社団法人, 日本人間ドック学会, 尿検査
※2 厚生労働省, e-ヘルスネット, たんぱく尿
※3 日本腎臓学会, 診療ガイドライン, CKD診療ガイド2012
※4 厚生労働省, e-ヘルスネット, 良質なたんぱく質
※5 厚生労働省, e-ヘルスネット, 高血圧
(すべて2022年11月8日参照)
プロフィール
管理栄養士
落水陽香里
調剤薬局の管理栄養士として栄養指導業務を経験後、フリーランス管理栄養士として独立。糖尿病や高血圧などで厳しい食事制限がある方を対象に「どんな状況でも食事を楽しめるような栄養指導」をコンセプトに個別の食事サポートをしている。また、管理栄養士として信頼できる健康情報を発信したいと思い、ヘルスケアコラムライターとして活動している。